薬学教育6年制で地方の転職、就職事情はどう変わるのか

薬学教育6年制で、地方の医療機関、調剤薬局などでの転職、就職事情はどう変わるのか?、ということを気にされる薬剤師さんが結構いらっしゃいます。中には、「若い薬剤師さんがたくさん出てきて、将来的に現在の職場から締め出されるのではないか」「今は1年ごとの定年延長で65歳まで働け、それ以降も体の動く限り働ける場所があるが、それもなくなるのでは」といった危惧(ぐ)する声もあります。中長期的に、地方の薬剤師さんの転職、就職事情はどうなっていくのでしょうか。

私立薬科大学・薬学部では地元志向が強まっている

薬学教育6年制になって、大きく変わった点は、4年制時代に比べ学費が急上昇したことです。国公立では4年制に比べ、6年制は100万円台前半のアップにとどまっているのに対し、私立では6年間で学費が総額1000万~1400万円と急上昇。それもあって、私立ではここ数年、全国的に定員割れのところが目立っています。
 6年制導入とともに薬科大学・薬学部も増え、薬剤師さんの人的供給も増えるのではないかとの当初の期待感は、急上昇した学費や、2年も修養年数が延びるなどのことで、学生数が伸び悩むなどして、薄れているのが現状です。
 しかし、一方で、地方の私立薬科大学・薬学部に見られる傾向として、地元の学生さんの割合が増加しているということがあります。これは大きなポイントになります。
 ある県の私立大学薬学部では、学生自体は定員割れしているものの約半数が地元とその周辺の学生になっています。また、別の地方の私立薬科大学では、7割ほどが地元出身になったところもあるそうです。
 これは、学費の高騰により、これまで県外の私立に子供を進学させていた保護者が、自宅通学にすれば、仕送り分だけでも金銭的負担が減らせるとのことで、地元私立への進学を勧めているということもあります。
 このような状況の県では、すでに、医療機関や調剤薬局が、地元の私立薬科大学・薬学部の新卒者を、能力や就労条件的に、やや厳しく選ぶということも始まっています。一方で、これまで大手などに薬剤師さんを取られていた医療機関や調剤薬局に、フレッシュな人材が入ってくるということもみられます。
 6年制時代は始まったばかりなので、どのような状況になっていくのかはっきりしない点もありますが、少なくとも、私立薬科大学・薬学部のある県では、数年のうちにこれまで人材不足だった薬剤師さんが、各医療機関や調剤薬局で充足するといったことがあるかもしれません。

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